動画制作の現場で生じうる法律問題についてお話しします。
Q. 街の雑踏の様子、通勤ラッシュの駅構内などの映像は、肖像権侵害となるか?
A. 公共の場所で、不特定の人を撮影しているにすぎない場合であれば、多くの場合は肖像権侵害とはなりません。
映像を見た際に、それが誰であるかを容易に特定できないような場合には、そもそも対象者の人格的利益を侵害したとは言えないので肖像権侵害にはなりません。
Q. では、本人が特定できる場合はどうでしょうか。
A. 「受忍限度※」の範囲内である場合には肖像権侵害にはなりません。
次のような場合には、「受忍限度」の範囲内として肖像権侵害に当たらないとされる可能性が高いと考えられます。
①撮影した映像の一部にたまたま特定の個人が写り込んだ場合
②不特定多数の者の姿を全体的に撮影した場合
③風物を写した映像・風景映像の場合
④空港等の混雑した様子を撮影した場合
ただし、写り込んだ対象者の行動が、一般的にみて、本人にとってあまり好ましくない様子の場合には、過度にそこに焦点を当てず、または、誰だかはっきりわからないようなアングルにするなどの配慮をすることが望ましいです。
※「受忍限度」とは
日照妨害等の他人の生活に悪影響を及ぼす行為、大気汚染や騒音等の公害影響、人格権の侵害などを受ける者が社会生活上受忍すべき程度のことをいう。
人が社会生活をする限りは、この種の影響は多少なりとも与えあっているものであるとして、お互いに合理的な範囲内においては受忍すべきであって、損害賠償や差し止め請求は認められないとされる。
以上、これらに気をつけて動画制作を行いましょう。
参考文献:角川学芸出版「よくわかるテレビ番組制作の法律相談」