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Category:マーケティング

【前編】最大のリスクを負ったNIKEのキャンペーン 『Dream Crazy』


(出典:コリンキャパニック公式Twitter)

キャンペーン「Dream Crazy」
世界で最も有名なタグラインの一つ、NIKEの「Just Do It.(ただやるのみ)」。
その生誕30年を記念して、2018年に行われたキャンペーンが「Dream Crazy(とことん夢みろ)」です。
このキャンペーンは一瞬のうちに全米で大きな話題になりました。
その主役が、選手生命を顧みず、人種差別に異議を唱えたNFLサンフランシスコ49ersのクオーターバック、
コリン・キャパニックだったからです。

サンフランシスコQBキャパニックの抗議
2016年、キャパニックは、試合での国歌斉唱の際、敬意を表す直立の姿勢ではなく、膝をついた姿勢をとりました。
当時、頻繁に起こっていた警察の黒人射殺事件や人種差別に対する抗議の意を表明したのです。


(出典:ブレーン)

これに対し、「国歌を侮辱した」とトランプ大統領が激怒しました。そのため、NFLもキャパニックの抗議行動に反対を表明。
「国歌の間、膝をついた姿勢は禁止する」と宣告したのです。
2016年の終わり、キャパニックはサンフランシスコ・49ersとの契約が切れるや、フリー・エージェントとなって、抗議行動を継続しました。
トランプとNFLの意図をおもんばかってか、彼を雇うフットボール・チームは現れませんでした。
そんな中で、NIKEが突然、「Just Do It.」の30周年記念キャンペーンにキャパニックを採用したのです。

NIKEの英断
NIKEはまず、自社ビルの上の巨大ビルボードに、キャパニックがじっと前方を見つめているモノクロの広告を掲出しました。


(出典:コリンキャパニック公式Twitter)

「何かを信じたら、例えそれがすべてを犠牲にすることであっても、ただやるのみ」(Believe in something. Even if it means sacrificing everything. Just Do It.)
というキャッチフレーズを添えて。

同時に、NIKEはYouTubeに「Dream Crazy」なる2分の動画を公開しました。

このキャパニックの広告は、NFLとの長いビジネス上の関係を持つNIKEにとっては非常にリスクの大きい決断でした。
事実、NIKEの創始者で会長のフィル・ナイトは、「バカな」と反対だったと、ニューヨークタイムズは報じています。
それを説き伏せたのは、30年間、NIKEの広告を手がけてきたWieden+Kennedyでした。
W+Kは、「自分の信念のためにNFLを敵に回しているキャパニックは、NIKEにとって非常に重要で意義ある代弁者になる」と、躊躇するフィルを説得したのです。

続きは次週投稿致します。